消滅時効の更新(中断)

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消滅時効の更新(中断)

消滅時効の更新(改正前民法の「中断」)

司法書士松谷の写真

借金の消滅時効については、最後の返済又は借入のときから進行していきますが、進行した時効期間の計算が振り出しに戻ってしまうことがあります。これが、時効の更新です。

改正前の民法では「中断」と呼ばれていましたが、中断という用語だと、一時的な停止を意味するという誤解を招きやすいことから、改正民法では、「更新」という言葉に変わりました。時効の更新にあたる事由は、いくつかあります。

各種の時効更新事由

2020年4月1日に施行された改正民法では、消滅時効の更新にあたる事由は、4つ規定されています。

①確定判決
②裁判上の和解等の確定判決と同一の効力を有するものによる権利の確定
③強制終了等の手続きが申し立ての取り下げまたは法律の規定に従わないことにより取り消されることなく終了した場合
④相手方が権利を承認した場合
が、時効更新事由とされています。


更新というのは進行した時効期間のリセットを意味します。つまり、それまでに進行した時効期間はゼロになり、確定のときから新たに時効の進行が始まります。

①②確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによる権利の確定

借金の返済を求める訴訟が起こされて、「判決が確定したとき」や「確定判決と同一の効力を有するものによって請求権が確定したとき(裁判上の和解が成立したときなど)」には、消滅時効が「更新」されます(民法147条2項)。


支払い督促に仮執行宣言が付されて、債務者がその送達後2週間以内に督促異議の申立をしないことにより支払督促が確定したときや、和解・調停が成立したときなどにも、同様に時効が更新されます(民法147条2項)。


そして、判決を取られた場合には、通常5年で完成する時効期間が、10年に伸びてしまいます(民法169条1項)。したがって、判決が確定した場合、判決確定から10年経過しないと、時効が成立していないことになります。


また、判決を取られた覚えはないという場合でも、ご本人が知らない間に判決が取られていることもあります。
訴状が届かない場合には、「公示送達」や「郵便に付する送達」という方法を使うと、訴状が届いたことになり、知らないうちに判決が出てしまうということがあるのです(詳しくは後述「裁判所からの書類が届かなくても判決を取られていることがあります」参照)。

③強制執行等の手続きが申立取下または法律の規定に従わないことにより取り消されることなく終了した場合

債務者の財産に対して強制執行や担保権の実行等の手続きがされて、取り下げ等されずに手続きが終了すれば、時効が更新されます(民法148条2項)。たとえば、給与の差し押さえや預金の差し押さえがあった場合、住宅ローン銀行が住宅の競売を行った場合に、これらの手続きが取下げされずに終了した時点で時効更新の効力が生じます。


ただし、強制執行等の申し立てが取り下げられた場合、時効更新の効果は生じません。
強制執行を取り下げた場合には、その手続期間中および取り下げによる手続き終了から6ヶ月間は「時効完成猶予」といって、時効が成立しないことにはなります(民法148条1項)が、時効更新の効果は生じず、時効期間のリセットはされないことになります。


なお、改正前の民法では、仮差押えや仮処分も時効中断事由とされていましたが、改正により、手続きが終了しても「更新」されず、手続き終了時から6か月間時効の完成が猶予されるだけになりました。

④債務の承認

時効の更新事由の代表的なものは、債務の承認です(民法152条)。


消滅時効期間の進行中に、一度でも借金があることを認めたのであれば、その時点で時効更新の効果が生じ、時効期間の計算は振り出しに戻ります。
時効期間の計算が振り出しに戻ったということは、また承認の時点から5年(または10年)が経過しないと、時効の援用はできないということになります。


そして、注意しなければいけないのは、「返済」は債務承認にあたるということです。
債務があることを認めたからこそ返済をするのですから、少額でも返済をすれば債務を承認したことになり、時効は更新してしまいます。同様に、支払いを猶予してくれるように申し入れたりすることも債務の承認となり、時効更新となります。

時効が完成した後の債務承認~時効援用権喪失

消滅時効期間が経過した後に債務承認をすると、もう時効期間が経過している以上、時効更新ということにはならないのですが、もはや債務者が時効を援用しないであろうと債権者が信頼することとなるため、信義則上、時効援用権を喪失することとなります(最高裁昭和41年4月20日判決)。


ただし、消滅時効期間経過後に少額の弁済をしたケースで、なお時効の援用を認めた下級審の判例があります。こちらのページで判例をご紹介し、詳しく説明しています。
時効援用権の喪失について詳しくはこちら

裁判所からの書類が届かなくても判決を取られていることがあります

過去に裁判所からの書類など来たことがないから、支払い督促や訴訟の手続きは取られたことがないはず、と思われる方がおられるかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。


支払い督促正本が、不在などで相手方に届かなかったときには、付郵便送達(ふゆうびんそうたつ)という方法がとられ、この方法によれば、実際には郵便が届かなかった場合でも、郵便を発送した時に、送達があったものとみなされます。この方法によって支払督促正本が送達されたら、手元には何も届かなくても、支払督促が確定し、時効が更新していることがあり得ます。


また、訴状の送達の場合には、付郵便送達に加えて、相手の所在が不明な場合の送達方法として、公示送達という方法もあります。これは、裁判所の前の掲示板などに訴状を貼り付けただけで、送達があったものとみなす方法で、この方法で訴状が送達された場合にもやはり、手元には何も届かなくても判決を取られているということがあり得るのです。

改正民法施行前に生じた時効中断事由

2020年4月1日に改正民法が施行されました。施行日以降に改正民法に規定されている時効更新・完成猶予事由が生じれば、改正民法が適用となります。


しかし、施行日以前に旧147条に規定されていた消滅時効の中断にあたる事由があれば、改正前の民法による時効中断効が認められます(改正法附則10条2項)。


したがって、改正以前は時効中断の効力が認められていた仮差押や仮処分は、改正後は時効更新の効力のない時効完成猶予事由となりましたが、施行日である2020年4月1日以前にされた仮差押や仮処分には、時効中断の効果が認められるということになります。

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