松谷司法書士事務所

このページの著者
司法書士 松谷賢一郎

保証債務と消滅時効

保証債務というのは、保証人が貸主に対して負っている債務のことです。
保証債務は、主債務(借主が貸主に負っている債務)とは別個の債務であり、主債務とは別に時効にかかることもあり得ます。
このページでは、保証債務と消滅時効の関係について、ご説明しています。
※このページで「保証」と言う場合、「連帯保証」を指しています。実務的には、「連帯保証」でない「通常保証」は、奨学金等を除いてほとんど利用されることはありません。

主債務と保証債務の消滅時効の中断

消滅時効の更新(改正前民法の「中断」)というのは、進行した時効期間がリセットされて、振り出しに戻るということです。


主債務に時効更新事由があった場合に保証債務の消滅時効も更新されるか、逆に保証債務に時効更新事由があった場合に主債務の消滅時効も更新されるかについて、下記の一覧表にまとめました。

主債務 保証債務
主債務者に
対して請求
更新される 更新される
(民法457条)
保証人に
対して請求
更新されない
(旧434条削除)
更新される
主債務者が
債務承認
更新される 更新される
(民法457条)
保証人が
債務承認
更新されない
(大判昭12.11.2)
更新される
主債務者・保証人に対する請求があった場合

民法457条には、「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる」と規定されています。したがって、主債務者に対して債権者が裁判上履行の請求をして、主債務の時効が更新される場合には、保証債務の時効も更新されることになります。


逆に、保証人に関して時効更新事由が発生した場合には、原則として主債務者にはその効力は及びません。


2020年4月1日改正前の民法では、連帯保証債務に関して「履行の請求」がされると、主債務の時効も中断すると規定されていました(旧458条による旧434条の準用)が、改正により旧434条が削除されたため、連帯保証人に対する履行の請求は、主債務者に時効更新の効果を及ぼさないということになりました。

主債務者・保証人が債務の承認があった場合

主債務者に対する履行の請求の場合と同様に、主債務者が債務の承認をすることで主債務の時効が更新された場合には、保証債務の時効も更新されることになります(民法457条)。


また、債務の一部返済をすることは債務の承認にあたり、やはり時効が更新されますが、主債務者が一部返済をして主債務の時効が更新された場合、主債務者の債務承認による時効更新の場合と同様、その効力は保証債務に及び、保証債務の時効も更新されます。


逆に、保証人が債務の承認をしたり債務の一部返済をした場合であっても、主債務の時効は更新されません(大判昭12.11.2)。保証債務の時効更新の効力は、債権者と主債務者の間に特約があるような場合を除いて、主債務には及びません。

判決の取得による時効期間の延長

主債務者のみに対して判決を取得した場合、主債務の時効期間は10年に延長となります(民法169条1項)が、このような場合にも、やはり主債務者に生じた事由が保証債務にも影響を及ぼしますので、保証債務の時効期間も10年となります(最高裁昭和43年10月17日判決)。


逆に、保証債務に対する民法169条1項による期間伸張の効果が主債務に及ぶのか(主債務の時効期間も10年になるのか)という問題については、大審院昭和20年9月10日判決では、主債務の時効期間には影響を与えないとされています。
※このことから、保証債務の時効期間経過前に主債務の時効期間が経過することがあり得ます。そのような場合には、保証人は主債務の時効を援用することができます(→時効の援用権者

主債務者による一部返済の保証債務への影響

時効期間が経過した後に一部返済がなされた場合、すでに時効は完成しているため、時効が中断するということにはなりませんが、貸主からすると、借主が返済をした以上、もう時効を援用しないであろうという信頼が生じるため、信義則により「時効援用権を喪失する」ということになります(最高裁昭和41年4月20日判決)。

しかしこの場合、保証人は時効援用権を失いません。これは、主債務者が時効援用権を喪失する理由が「信義則」であり、相手方の「債務者はもはや時効の援用をしないであろう」との期待を保護する趣旨なのだから、連帯保証人の時効援用権に効力は及ばないと考えられるためです。

主債務者が一部返済を行ったのが時効期間経過のなのかなのかによって結論が異なりますので、ご注意ください。

主債務 保証債務
時効期間経過前に
主債務者が債務承認
更新される 更新される
(民法457条)
時効期間経過後に
主債務者が債務承認
援用権を喪失する(※) 援用権を失わない

※ただし、消滅時効期間経過後に少額の弁済をした後であっても消滅時効の援用を認めた下級審の判例があります(→時効援用権の喪失について)。


当事務所で消滅時効の援用を行った実績のある会社

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