給与所得者再生とは

「給与所得者等再生」とは

給与所得者再生とは?

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「給与所得者等再生」というのは、通常の個人再生の特則です。これに対し、原則的な個人再生のことを「小規模個人再生」と言います。
つまり、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者再生」の2種類があります。
そのネーミングから、給与所得者(サラリーマン)の方は給与所得者再生を選ばなければいけないように感じますが、サラリーマンの方であっても、実際によく利用されるのは小規模個人再生の方で、給与所得者等再生はあまり利用されません。
では、どのような場合に給与所得者等再生が利用されるのでしょうか。

給与所得者等再生を利用すべきケース

小規模個人再生よりも給与所得者等再生を利用したほうがよいケースとしては、2つあります。
「債権者の多数が再生に反対するケース」と、債権者の一部であっても、債権額の総額の過半数を占めるような「大口債権者が再生に反対するケース」です。

半数以上の債権者が債務整理に反対している

小規模個人再生では、債権者の頭数の過半数の同意が要件となっており、半数以上の債権者が再生に反対している場合、再生計画案が認可されません。個人再生に失敗してしまいます。
この点、給与所得者等再生なら、債権者が再生計画案に同意するとかしないとかの決議自体がありませんので、どれだけ多数の債権者が反対していても、全債権者が反対していても、再生計画案を認めてもらって借金を減額できます。
ただし、実はこちらに該当するケースは、ほとんどありません。
実際に再生に反対する債権者はほとんどなく、「半数以上の債権者が反対しそう」というケースは、かなり珍しいケースと言えます。

大口の債権者が債務整理に反対している

小規模個人再生では、債権者の頭数の過半数の同意があったとしても、債権者の債権額の2分の1以上の同意がなければ、やはり再生計画案は認可されません。
つまり、たった一人の債権者が反対している場合であっても、その債権者の持っている債権額が総債権額の過半数であれば、再生計画案は認可されません。
そこで、総債権額の過半数を占めるような大口の債権者が再生に反対しそうな場合には、小規模個人再生より給与所得者等再生を選択する方が、確実です。

給与所得者等再生のデメリット

上記のように、給与所得者等再生は、小規模個人再生とくらべ、「債権者の同意が不要で、全債権者が反対したとしても再生が認可される」というメリットがあります。
しかし、その分、デメリットもあります。このデメリットがあるため、給与所得者等再生は、あまり利用されていないのです。
以下で、給与所得者等再生のデメリットをご紹介します。

再生認可後の支払額が小規模個人再生よりも大きくなる可能性が高い

給与所得者等再生を利用すると、小規模個人再生よりも借金の総支払額が大きくなってしまう可能性が高いです。
まず、小規模個人再生では、以下の2つのうち、高い方の金額まで借金が減額されます。
①民事再生法の定める最低弁済額
②債務者の総資産合計額
債務者に特に大きな資産がない場合には、①の民事再生法の定める最低弁済額まで減額されます。
その場合、借金返済総額が5分の1~10分の1程度にまで減額されるケースが多いです(ただし100万円より減額されることはありません)。
これに対し給与所得者等再生の場合には、以下の3つのうち、もっとも高い金額まで借金が減額されます。
①民事再生法の定める最低弁済額
②債務者の総資産合計額
③可処分所得の2年分
つまり、小規模個人再生の①②に足して、③の可処分所得の2年分という要件が加わります。
実際に可処分所得の2年分を計算してみると、①②より高額になるケースが多いです。
したがって、給与所得者等再生を利用すると、③の基準が採用されて小規模個人再生よりも支払い額が上がってしまうケースが多くなります。
可処分所得は、現実の可処分所得ではなく、2年分の源泉徴収票と市民税の課税証明書から計算されます。給与所得者再生をご希望の場合、ご相談の際に2年分の源泉徴収票と市民税の課税証明書をお持ちいただければ、どのぐらいの返済額になるか、計算ができます。

収入の安定性の要件が小規模個人再生よりも厳しい

給与所得者等再生を利用できるのは、小規模個人再生が認められる要件に加えて、下記の要件もクリアしている必要があります。
・給与所得者(又はこれに近い定期収入あり)で、収入の変動の幅が小さいこと
・可処分所得の2年分以上の支払いが可能であること
・過去7年以内に、給与所得者再生や自己破産をしていないこと
「収入の変動の幅が小さい」かどうかは、過去の年収ベースで20%以上の収入の変動があるかどうかで判断されます。
20%以上の収入の変動が場合には、給与所得者等再生を利用できません。
つまり、正社員のサラリーマンであっても、ボーナスや歩合などの要素が大きく、1年で20%以上収入が減ったり増えたりしていると、「収入の変動の幅が小さい」とは見られないということです。
ただし、そのような場合にも、今後は変動が小さくなる見通しであれば、その旨裁判所に説明することで、給与所得者等再生が認可される可能性はあります。

給与所得者等再生を利用できる人

さきほど、給与所得者再生の要件として、「給与所得者(又はこれに近い定期収入あり)で、収入の変動の幅が小さいこと」ということをご説明しましたが、具体的には、どのような人が給与所得者等再生を利用できるのか、ご説明します。

会社員、公務員

会社員や公務員であれば、給与所得者等再生を利用できます。ただし、1年に20%を超える収入の変動がある場合や、収入の金額が少なすぎる場合にはこれらの職業であっても利用できません。

アルバイト、パート、契約社員、派遣社員

アルバイトやパート、契約社員や派遣社員など、さまざまな給与所得者の形があります。
これらの職業の人でも、収入の金額が足りていて安定していれば、給与所得者等再生を利用できる可能性があります。
ただ、こうした方の場合、転職を繰り返していたり就業状況が不安定であったり、収入の金額が足りなかったりして利用が難しくなるケースが多いので、個別の検討が必要です。

年金生活者

年金生活者は、給与所得者ではありません。ただ、年金は極めて安定した収入なので、金額さえ足りていれば給与所得者等再生を利用できる可能性があります。

給与所得者等再生を利用できない人

以下のような人は、給与所得者等再生を利用できません。

自営業者

自営業者は、基本的に給与所得者等再生を利用できません。収入の変動幅が小さくても、自営業という性質上、給与所得者等再生を利用できるほどには収入が安定していないと考えられるからです。

収入が不安定な人

給与所得者であっても収入が不安定な人は給与所得者等再生を利用できません。

収入がない人

収入が無い人は、そもそも個人再生を利用できません。

まとめ

個人再生の手続きは、かなり複雑な手続きです。
給与所得者等再生は、小規模個人再生よりさらに複雑で、専門家によるサポートの必要性が高いです。
借金にお困りの場合には、状況が悪化する前に、お早めに司法書士までご相談下さい。

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