NHKに対する消滅時効の援用

NHK受信料を長期間払っていない場合の消滅時効

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NHK放送の受信設備、つまりテレビ等を設置すると、NHKと受信契約を締結する義務が発生します。そして、受信契約を締結したら、NHKに受信料を支払う必要があります。

しかし、NHKの受信料にも消滅時効の適用がありますので、長期間受信料を支払っていない場合、消滅時効の援用をすることで、支払い義務を免れることができることがあります。

このページでは、NHK受信料の消滅時効の援用と、受信契約成立時期や時効の起算点について重要な判断を示した平成29年12月6日最高裁判決について、司法書士がご説明しています。

NHK受信料の消滅時効の援用

消滅時効期間が経過していても、時効の効果は当然には発生せず、時効の利益を受けようとする場合には、その旨の意思表示をすることが必要とされています。
この、時効の利益を受けようとする意思表示のことを、「消滅時効の援用」といいます。

NHKは過去の滞納分をすべて請求してきますが、消滅時効の援用をすることにより、時効期間が経過している分については支払う義務がなくなります。時効期間は「5年」です(最高裁平成 26 年9月5日判決)。

ただし、消滅時効の援用で消滅させることができるのは、時効期間が経過した「5年以上前」の受信料であり、時効期間が経過していない「直近5年分」の受信料については、支払う必要があります。

たとえば、平成28年6月分以前のNHK放送受信料債権について時効援用し、平成28年6月以前の債務を消滅させた場合でも、平成28年7月以降の受信料については支払う必要があります。

この直近5年分の受信料の支払いに関しては、NHKから「放送受信料未払い確認書」という書類が送られてきます。こちらの確認書に、平成28年7月以降の受信料の未払い額が書かれています。これを返送すれば、平成28年7月以降の受信料の額については、債務承認したことになります。

振込用紙も送られてきますので、平成28年7月以降の受信料はこの振込用紙で支払うことになります。一括払いの請求となっていますので、一括で支払うのが難しければ、分割払いの交渉が必要です。

NHK受信料(定期給付債権)に関する民法改正

近年、民法が改正されてNHK受信料の消滅時効期間も若干の影響を受けました。

改正前の民法においては、NHK受信料の消滅時効が成立するのに必要な期間は「5年」でした。これは、NHK受信料は「定期払いの債権(定期給付債権)」として5年の「短期消滅時効」が定められていたからです。

当時、債権の原則的な時効期間は10年とされており、NHK受信料のような定期給付債権については5年とする特則が適用されていました。

しかし、改正後の民法においては、時効期間は「すべての債権について5年」に統一され、定期給付債権についての短期消滅時効の規定は存在意義を失って、廃止されました。

つまり、改正前は定期給付債権として時効期間が5年だったのが、改正後はすべての債権の時効期間が5年となったということで、改正前も改正後も、NHK受信料の消滅時効が成立するまでの年数は「5年」であり、変更はありません。

消滅時効期間の起算点は、改正後は「債権者が権利を行使できることを知ったときから」ですが、NHKは通常「不払いが発生したと同時に不払い受信料を請求できることを知る」でしょうから、実質的に改正前も改正後で、時効の期間と起算点のいずれについても、ほぼ変更はないといってよいでしょう。

なお改正民法が施行されたのは2020年4月1日です。その前に発生した債権については旧民法が適用され、その後に発生した債権については改正後の民法が適用されます。

NHK受信料の時効の起算点は?

民法の規定をふまえて、NHK受信料の時効期間である「5年」は、具体的にいつからカウントするのか検討しましょう。
実はこの点については「NHKとの受信契約」を締結しているかどうかで異なる可能性があります。

受信契約を締結している場合

受信契約を締結している場合、基本的に「最終支払日の翌日」から5年をカウントします。つまり最後にNHK受信料を支払った翌日から5年が経過した時点で受信料の支払い義務が消滅します。

ただし契約締結後1度も支払いをしていなければ、1回目の支払期限の翌日から数えて5年が経過した時点で受信料の時効が成立します。

受信契約を締結していない場合

NHKとの受信契約を締結していない場合、「契約成立時」まで時効期間が進行しません。契約が成立するのは、「NHKが起こした裁判の判決が確定したとき」です。

つまり、判決によってNHK受信契約が成立するまで時効が進行しないので、契約未締結の状態では、いくら時間が経っても消滅時効が成立しないことになります。

受信契約を締結せずに不払いを続けている場合、テレビ等の受信機を設置した時点からのすべての受信料を払わねばならない可能性があります。

この点については「平成29年12月6日最高裁判決」で詳しく述べられているので、次項で詳しくご説明します。

NHK受信契約の成立時期

放送法は「テレビ等のNHKを受信できる設備を設置した者は、NHKとの間で受信契約をしなければならない」と定めています(放送法64条1項本文)。

最高裁は、この規定に法的拘束力があると判断しました。なお放送法64条1項には罰則はないので、テレビを設置しながら受信契約を締結しなくても処罰はありません。

次に、上記の放送法による契約締結義務にもとづいて「利用者が納得しなくても受信契約が強制的に成立してしまうのか」が問題となります。

最高裁は、放送法による受信契約締結に関する規定は義務ではあるけれども、テレビ等の受信設備を設置したからといって「自動的に契約が成立するものではない」と判断しました。たとえばNHKが利用者へ受信契約を締結するよう求める書面等を送付しても、利用者が承諾しなければ受信契約は成立しません。

NHKが「受信契約を締結するように」という裁判を起こし、「契約締結を認める判決が確定」した時点ではじめて受信契約が成立する、と判断されました。

平成29年12月6日最高裁判決原文はこちらの最高裁判所のホームページでご確認ください。

受信契約未締結の場合のNHK受信料発生時期

それでは、受信契約未締結の場合、「NHK受信料の支払い義務」はいつから発生するのでしょうか?

一般的な感覚では「NHKとの受信契約が成立していない以上、受信料の支払い義務は発生しないだろう」と考える方も多いでしょう。

しかし、最高裁の判断は異なります。受信契約を締結している場合はもちろんのこと、「受信契約が成立していない場合であっても」「テレビ等の放送受信機を設置した時点から」受信料の支払い義務が発生すると判断されました。

その理由は、「同じようにテレビを設置してNHK放送を受信できる状態になっているのに、放送法に従って速やかに受信契約を締結した人と放送法を無視して受信契約を締結しなかった人とで受信料の支払い義務に差が発生するのは不公平」だからです。

放送法に従ってテレビを設置してから真面目に受信料を払ってきた人よりも放送法を無視して受信契約を締結しなかった人が優遇されるのはおかしい、という理屈です。

こういった理由づけにより最高裁は、NHKとの受信契約が成立していない段階であっても「テレビ等の受信機を設置した時点」からのNHK受信料支払い義務が発生する、と判断しました。

受信契約未締結の場合のNHK受信料の消滅時効の起算点

それでは、NHKとの受信契約を締結していなかった人は、NHK受信料の消滅時効を援用して受信料の支払いを拒めるのでしょうか?
あらためて、NHK受信料の消滅時効の起算点が問題となります。

この点について最高裁は、NHK受信契約を締結していない人については「消滅時効の進行が始まらない」と判断しました。この判断は極めて重大です。この判断によると、受信契約が成立しない限り5年の時効期間は進行しないので、いつまでもNHK受信料の支払い義務が残り続けてしまうためです。

なぜこのような判断が行われたのでしょうか?

1つには、利用者がNHKへテレビ等の設置を通知しない限りNHK側はテレビ等が設置されたことをしる方法がなく、消滅時効の期間が進行するのは不合理だからです。

また放送法によって受信契約の義務があるにもかかわらず受信契約をしない人については、きちんと受信契約をした人と比べて不利益が発生してもやむをえない、とも判断されています。

結局、今回の最高裁の判決によると受信契約が成立するのは「NHKが訴訟を起こして判決が確定したとき」なので、そのときまでは時効期間の進行も始まらず、時効が成立する余地はありません。

以上より、NHK受信契約を締結していなくても「テレビ等の設置」をした時点で受信料の支払い義務が発生し、受信契約を締結するまでは消滅時効が進行しないのですから、受信契約を締結していない人は、テレビ等を設置した時点から何年経っていても消滅時効の主張はできず、テレビ等を設置した時点からの全額の受信料を払わねばならないという結論になります。

なお、NHK受信契約を締結している方については、民法によって定められているとおり「最終支払日の翌日」または「当初の支払い予定日の翌日(一度も支払っていない場合)」から5年が経過すると時効が成立します。今回の判例をさほど気にする必要はありません。

平成29年12月6日最高裁判決のまとめ

平成29年12月6日最高裁判決の内容をまとめると、以下の通りとなります。

 NHK受信契約を締結しなかった場合、NHKから訴訟を起こされて判決が確定した時点でNHKとの受信契約が成立する
 NHK受信契約を締結しなくても、テレビ等の設置をした時点からNHK受信料を払わねばならない義務が生じる
 NHK受信契約が成立するまではNHK受信料の時効が進行しないので、いつまででも受信料支払い義務が残り続ける

その結果、テレビ等を設置してもNHK受信契約を締結せずに受信料を払わなかった場合、後にNHKから訴訟を起こされると「テレビ等の設置をした時点からのNHK受信料を全額払わねばならない」可能性が極めて高くなります。

理論的には10年分、20年分やそれ以上のNHK受信料支払い命令が出る可能性もあるので、受信料不払いには多大なリスクが発生するといえるでしょう。最高裁は「NHK受信料の不払いを認める余地はほとんどない」という態度を示したと考えられます。

今後、NHK受信料を不払いにすると重大な不利益を受ける可能性が高いので、十分に注意しましょう。

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